30人の壁??

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人数の壁とは何ですか?

前回は、年収の壁についてお話ししましたが、今回は人数の壁をご紹介します。みなさんは「30人の壁」といわれるものをご存知でしょうか?私もこの「30人の壁」と聞いて、最初はなんだそりゃと思いました。ただ、よくよくどんなものかを知っていくうちに、なるほどなあと思うようになりました。

はじめに、みなさんが勤務する会社の従業員は何名いらっしゃいますか?国内各地に営業拠点がある、または海外にも進出している企業であれば、5000人、1万人という人数も十分あり得ます。2025年3月31日時点で、みなさん誰もが知っている「トヨタ自動車」の場合、グループ連結で約389000人、トヨタ自動車単体で約71500人であると公表されています。すごい人数ですね。それこそ7万人といいますと、都市部ならびに政令指定都市を除くと多くの市町村が10万人未満、市でみましても5万人~8万人がボリュームゾーンに該当しますので、トヨタ自動車単体のみでも実に多くの人がお仕事をしているかがわかります。

これだけの規模になれば、入社から定年まで何十年と勤めを果たした場合でも、社員間でなんの接点もなかった、顔すら見たことがなかったなどのことが生じるのは当たり前でしょう。それこそ電話やメールではやりとりしたことがある場合だと、関わり合いを持ったことがあるといえるでしょうね。近年ではWEB会議も多くの企業で定着しましたから、WEB会議でカメラ越しに挨拶をしたなんてことで、拠点が違えどネットを通じて社員間の接点は増えたかもしれません。

今回テーマとした「30人の壁」」ですが、これは、企業が産声を上げ、事業をスタートして、徐々に発展、成長していく過程で、その名のとおり従業員数が30名に差しかかったときに、最初にぶつかる壁とされ、それまでにはなかった様々な問題が表出してくるといわれています。

まず、人員の拡大で意思の疎通や情報の共有が難しくなってくることで組織の一体感が損なわれやすくなるといわれています。10名~20名ほどの規模であれば、経営者も毎日、ほぼ全従業員の顔を見て状況を把握することが可能ですが、30人を超えると一気にこの状況把握が難しくなります。たとえば、性格(キャラクター)の把握もしかりですし、個々の従業員の能力の把握、あるいは個々の従業員のメンタル状況の把握も難しくなります。また、30人を超えるころには創業時からのスタートメンバーとその後に入社した従業員も当たり前に混在しますが、創業時の理念や社是に対しての認識にもずれが生じるともいわれています。

20名程度であれば、日々の業務の中で従業員間の雑談であったり、声かけであったり、互いに相談しあったりという行動で多くの問題が解決可能といわれていますが、30名を超えるとそれまでは自然に伝わり、共有できていた情報が伝わりにくくなるといわれています。情報が適切に伝わらないことで、業務に関しても、勘違いや思い込みが生じたり、伝達漏れ、すれ違いというようにチームワークに乱れがでてきます。

また、20名程度であれば、横並びの並列組織でも機能しますが、30人を超えると、組織を整理して指示系統を明確にする必要が生じます。そのためには管理職を適切に配置しなければなりません。それを怠れば、人によって教え方が違う、評価も違う、指示された内容のニュアンスが違う??ということになり、従業員のモチベーション低下につながってきます。従業員のモチベーション低下を回避するためにも、人材(人財)の採用~育成のプロセスを仕組み化しないと、採用しても早期離職、そのような状況が続くと既存社員においても離職が増加し、定着率低下といった悪循環を引き起こし、結果として残された「できる人」に業務が集中し、その人もしわ寄せによって疲弊し、不満を持つようになり、会社としてはいてもらわないと正直回っていかないというような大事な人材(人財)をも失ってしまうことになりかねません。

企業にも、創業期(スタート期)~成長期~安定成長期~成熟期~変革期というように成長サイクルがあります。その中で、今回は創業期~成長期の過程に向かう企業で、最初に直面する壁についてご紹介しました。もちろん、会社のスタートも千差万別ですから、いきなり数百人、数千人規模からスタートする会社もありますので、すべての企業に当てはまるものではありません。ただ、共通していえるのは人数が増えれば、様々な問題が生じることから、組織構造の仕組み化、公正な人事制度の構築、組織風土の醸成といった取り組みは売上を増加させることと同じくらい重要であるということです。

管理職ひとつとっても、適切な人材(人財)に担ってもらう必要があります。感覚だけに頼って、あいまいな形で任用するのでは組織はうまく機能しません。また、管理職にもさらに上を目指してもらうためにはそこでもさらに育成をしていかなければなりません。

企業経営は、ヒト、モノ、カネの三要素からなるといわれています。私はこの中で、順番に着目しています。三要素の中で必ず「ヒト」が最初にでてきます。もちろんいずれが欠けてもビジネスとしては大成しませんが、やはり「人材(人財)」が企業を成長・発展させるうえで重要な役割を担っているということだからなのだと思っています。私どもは企業の成長サイクルに応じ、そのフェーズごとに取り組むべき課題を洗い出し、より良い企業として発展し、認知され、成長していくことを支援することができます。人事労務に関するお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

田中 慎也
田中 慎也
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(日本FP 協会認定)
企業とそこで働く従業員双方の立場から、より良い職場環境を構築するための最適解を導き出し、良き伴走者となって積極的に支援します!
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