勤務間インターバル制度

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次の勤務まで何時間空いていますか?

勤務間インターバル制度とは、前日の勤務終了時刻から翌日の勤務開始時刻までの間に一定の休息時間を確保することを目標として、2019年4月1日に「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の一部改正によって導入されました。ただし、今日において現行制度は「努力義務」にとどまっており、罰則等は定められていません。なお、現在この勤務間インターバル義務化の検討が具体化しており、法改正に向けた動きが加速化しています。改正案ではインターバルの時間についても原則11時間を軸に検討がなされています。

そもそも、なぜ11時間が軸となっているかについてですが、EUではEU労働時間指令というかたちで日本よりもずいぶんと早くにこの仕組みを法制化し、EU加盟国では「連続11時間休息」を義務付けていることによります。11時間といってもピンとこないかもしれませんから少しここで具体例を出しながら考えてみましょう。                                         【通常:始業時刻 8時30分 終業時刻 18時 休憩 計90分】                          このケースで時間外で2時間30分の残業があったとしましょう。すると終業時刻は20時30分です。20時30分から翌日の始業時刻8時30分までは12時間空いていますのでOKです。なんだ楽勝じゃない!?と思ってしまいそうですが、その日は繁忙により、やむなく22時まで就業せざるを得なかった場合、終業時刻が22時であれば、翌日の始業時刻8時30分まで10時間30分しか空いていませんから、翌日の始業時刻は9時以降にしなければなりません。後者のように決算期や棚卸期、セール準備など繁忙によって深夜まで仕事が長引いてしまった経験をされた方はかなりいらっしゃるかと思います。中には11時間も休息は不要なのではという声も上がってきそうですが、この始業時刻、終業時刻はあくまで会社に入退室している時間だけです。実際に通勤に要する時間は加味されていません。通勤が片道1時間であればどうでしょう!11時間から片道1時間、往復2時間を差し引くと9時間になります。その時間で、食事を取ったり、入浴をしたり、家族とのだんらんの時間、睡眠の時間というように考えるとわりとタイトな感じがしませんか?厚生労働省が2023年に作成した「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」では個人差はあるものの成人で6~8時間が適正であるとしており、少なくとも6時間以上の睡眠時間を確保することが推奨されるとしています。その点から考えますと、通勤時間如何によっては1日の勤務を終え十分に安らぎを得ることができない可能性もあるわけです。              

来春に労働基準法が約40年ぶりの大改正がなされると多くの情報が飛び交い、もちろんその中にはこの勤務間インターバル制度の義務化も盛り込まれていましたが、厚生労働省が2026年通常国会に労働基準法改正法案の提出を見送る方針としたことで、来春の実現には至らないことになりました。もちろん議論そのものは継続中というかたちです。

しかしながら、企業は従業員に対し安全配慮義務を負っています。その根拠となるのが労働契約法 第5条 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をしなければならない。」との規定です。この安全配慮義務は、判例、行政解釈において健康(メンタルも含む)も保護対象とされ、狭義では安全配慮義務の一部として健康配慮義務として従業員の生命・身体・心身の健康を危険から守るよう配慮するものとしています。

そのためにも、企業は勤務間インターバル制度については今一度意義のある制度だということを認識いただければと思います。以下、勤務間インターバル制度がなぜ重要なのかについてまとめてみました。

休息が、従業員も会社も守ります!

健康リスクの予防

  • 過労、睡眠不足の防止
  • 脳、心臓疾患、過労死リスクの低減
  • 心身の回復と健康維持

労働災害・事故防止

  • 集中力と判断力の低下を予防
  • ヒューマンエラーの防止
  • 重大事故リスクの回避

法務リスク対策

  • 安全配慮義務違反の予防
  • 企業の管理体制強化の証明になる
  • 訴訟リスクの低減

生産性と企業価値

  • 業務品質と集中力の回復
  • 従業員満足度と採用力の向上
  • 離職率の低下

決して法律対策ではなく、従業員と会社を守る合理的な休息ルールとして導入をご検討ください。

この記事を書いた人

田中 慎也
田中 慎也
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(日本FP 協会認定)
企業とそこで働く従業員双方の立場から、より良い職場環境を構築するための最適解を導き出し、良き伴走者となって積極的に支援します!
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