若年層の雇用問題

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離職することの原因はどこに??

厚生労働省は毎年10月に新規学校卒業就職者の離職状況について集計結果を公表しています。本年も10月24日に公表がなされました。よく、「入社3年以内の離職率」というワードを聞かれた方も多いと思いますが、まさにその期間においての若年層の離職状況をリサーチしているわけです。具体的には学校の区分も中学卒業、高校卒業、短大等卒業(専門学校を含みます。)、大学卒業に分けて集計をしています。

みなさんも「3年以内に4割が辞める!」、「3人に1人は3年以内にやめる!」なんていうことをニュース等でお聞きになった方もいらっしゃると思います。今年(2025年)の発表で卒業後3年以内の離職が確定値として把握できるのは、2022年春に卒業し、就職、その後2022年3月1日から2025年3月31日までの期間に離職した人の集計分になります。

公表された数値によりますと、2022年春卒業後、就職し、3年以内に離職した割合を見ていきますと、中学卒業で54.1%、高校卒業で37.9%、短大等卒業で44.5%、大学卒業で33.8%となっています。具体的にはすべての学校卒業後の就職者数729600人に対し、3年以内の離職者数は267785人、率にしますと36.7%です。ですから3年以内に4割が辞めるというのはかなり的を得た値であり、またこの数値は過去30年間の推移を見ましても、概ね同じようなトレンドで大きく変化していません。1999年から2005年にかけては7年連続で40%を上回り、2006年以降は概ね35%前後で推移しています。

では、なぜ新規学卒就職者の離職率はこれほど高いのでしょうか?理由は様々挙げられますが、やはり一番大きいのは学生時代に抱いていた職業イメージと現実の仕事内容にギャップがあることだと言われています。また、学生時代なら気が合う人との付き合い中心で乗り切った人間関係も社会に出ると、そうはいかず、うまく職場に溶け込めないことも多いようです。そしてそれらの要素が蓄積すると、仕事のやりがい低下につながり、次第に待遇面にも不満を抱くようになり、自分にはこの仕事は向いていないのではないかという結論に行き着くことに…また、近年は労働市場の活況もあいまって、転職をポジティブに捉える志向も強く、離職=失敗とは結び付けずに、より高い自己実現のためにと転職を決断する人も増えてきています。現実として、転職によってやりがいのある仕事に就けた人、収入面においても賃金アップにより生活の面でも恩恵を受ける人の割合は多くなってきています。

これまで新規学卒就職者の離職率の高さについて触れてきましたが、一方受入側である企業の視点からはどのようなことがいえるのでしょうか。企業も人材(人財)確保のためのPR活動やインターンシップの実施、入社試験の実施、面接試験実施における面接官の育成等々、企業が採用において発生するコストは決して少なくはありません。そのうえで、採用後は戦力となってもらうための教育、指導を行い育成していきます。もちろん、育成の過程も賃金は発生します。企業としてはコストの面からしても、採用した人材(人財)にどんどん成長してもらうことが最も理想的であるのです。縁あって入社したものの、定着せずに離職が加速すると事業運営にも大きな支障をきたします。そのため、採用した企業の側からも、入社直後からの教育、指導、育成のプロセスに問題がないのかを検証していく必要もあるでしょう。決して「若い子がすぐ辞めるのは昔からの常識」なんていう考えではいけません。

雇用の流動化によって、おのずと成長産業に労働者が移転していくこと自体は非常に自然な流れではあります。働く側も、自分自身がどのような仕事に、あるいは産業に携わりたいのかをイメージし、そのためにはどのようなスキル、能力が必要かも知っておくべきだと思います。天職に就くことは、なかなか簡単なことではありませんが、適職に就くことはみなさんそれぞれが達成可能だと思っています。

離職率が常に高止まりしている事業所で、この人が辞めても変わりはいくらでもいるなんて高を括っていると、その事業所にはやがて誰からも応募がこなくなってしまいますよ…

離職率が総じて高い事業所は、その原因がなんであるのかを究明し、対策を取らないと明るい未来はやってきません。新卒者に限らず、離職率の高い事業所は、従業員満足度が低いのだということは肝に銘じておくべきことです。これまで縁あってたくさんの事業所を見てきましたが、離職率の低い職場は総じて従業員満足度は高いです。企業風土は変革できます。そのお手伝いができることは、私にとって非常にやりがいを感じるところでもあります。これからも、企業目線、従業員目線いずれの立場も尊重し、働きやすい職場がどんどんと拡がれば、私にとってこれほどうれしいことはありません。

今回は新規学校卒業就職者の離職をテーマにしましたが、新規学校卒業就職者のみならず、離職率は企業の健全性を評価するうえでも重要な指標です。高い離職率が慢性的に続いているようなら決して放置せず、直ちにアクションをおこしていただきたいと思います。

この記事を書いた人

田中 慎也
田中 慎也
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(日本FP 協会認定)
企業とそこで働く従業員双方の立場から、より良い職場環境を構築するための最適解を導き出し、良き伴走者となって積極的に支援します!
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